1. 行きは1個、帰りは2個。「マトリョーシカ・パッキング」の絶大な効果
韓国の問屋街でコスメやファッションアイテムを大量に買い付けたい。ハワイやグアムのアウトレットでブランド品を爆買いしたい。あるいは純粋に、現地で新しいスーツケースを新調する予定がある。こんな時、行きの手荷物をどうするかがLCCトラベラーの腕の見せ所です。
LCCは「荷物を1個預けるごと」に数千円の手数料が発生します。行きに「空っぽの予備スーツケース」にお金を払って預けるのは、あまりにも無駄な出費です。そこで多くの達人が実践するのが、大きなスーツケース(外箱)の中に、一回り小さなスーツケース(内箱)を丸ごと収納するマトリョーシカ・パッキング(入れ子構造)です。これなら行きは「預け荷物1個」の料金で済み、帰りはお土産用の莫大な収納スペースを生み出すことができます。
2. 失敗しない入れ方のコツ:「キャスター」と「内側の凸凹」の干渉
「外側がLサイズで、内側がMサイズなら普通に入るだろう」と高を括っていると、出発前夜にパニックになります。マトリョーシカを成功させる上で最大の障壁となるのが、内寸のトラップとキャスターの厚みです。
スーツケースは、カタログに記載されている外寸(全体サイズ)に対して、内寸(実際に物を入れられる空間)はフレームや内張りの厚みにより数センチ小さくなります。さらに背面のハンドルを収納する金属パイプが内側にせり出していることが多く、これが内箱のキャスターと干渉してジッパーが閉まらないケースが頻発します。同じメーカーの同シリーズ(LとMなど)であれば綺麗に重なるように設計されていることが多いですが、別メーカーのものを組み合わせる場合は、事前に内箱の「キャスターの先からハンドルのてっぺんまで」を実測し、外箱の内寸より最低でも5cm以上のクリアランス(余白)が取れるかを確認してください。
3. パッキングの盲点:中身がゼロのスーツケースは「割れやすい」
スーツケース(特にポリカーボネート製などのハードケース)の耐久力は、「中に衣類などの荷物が詰まっていて、内側からボディが支えられている状態」で最大になるように設計されています。
マトリョーシカに成功したとしても、内箱の中身を「完全に空っぽ(空洞)」にした状態で飛行機に預けるのは非常に危険です。コンテナの底に積まれ、その上に別の乗客の重い20kgのスーツケースが何個も重ねられた場合、空洞のケースは圧力に耐えきれず、ボディが大きくへこんだり、最悪の場合は亀裂が入って割れてしまう確率が跳ね上がります。
これを防ぐため、内箱の中の空間には、行きの分の衣類、下着、タオルなどを緩衝材代わりに詰め込み、ある程度の「剛性」を持たせておくことが絶対に必要です。
4. 帰りの「荷物追加枠」は予約時に絶対に確保せよ
マトリョーシカで無事に現地に到着し、帰国時にスーツケースが2個に分裂した際に待ち受けるのが、LCCの非情な荷物料金システムです。
LCCの受託手荷物料金は、「航空券の予約と同時」に追加するのが最も安く済みます。帰りのチェクインカウンターで突然「荷物が1個増えました」と申告した場合、事前のWEB予約料金の2倍〜3倍にもなる「空港当日手数料」を請求されます。これでは何のためにマトリョーシカで節約したのか分かりません。「帰りは確実に荷物が2個になる」と分かっている場合は、航空券の予約段階で、復路のみ「受託手荷物枠を2つ分(または増枠した重量)」購入しておくのが鉄則です。
5. 代替案:大容量の「折りたたみボストンバッグ」は耐えられるか
「手持ちのスーツケースでは寸法的にどうしても入れ子にできない」場合の代替案として、行きは小さく畳める「大容量の折りたたみボストンバッグ」を持っていく方法があります。
しかしここでも注意が必要です。現地でお土産を詰めて重量が15kgや20kgに達した布製バッグを預けた場合、LCCの手荒な手荷物ハンドリング(放り投げやコンベアの引っ掛かり)に耐えられず、生地が裂けて中身が散乱する悲劇が起こり得ます。「100円均一のペラペラのバッグ」や「IKEAの青い袋」などをそのまま預けるのは自殺行為です。
折りたたみバッグを預け入れ用として使う場合は、バリスティックナイロン、厚手キャンバス(帆布)、パラシュート生地など、カッターで切りつけても破れにくい強靭な素材を採用しているミリタリー仕様やアウトドアブランドのものを選びましょう。また、南京錠をかけられるダブルファスナー仕様であることも、盗難防止の観点から必須条件となります。